木枯らしの吹く寒い日や、雨に降り込められてしまった休日など、「好きな人に会いたい」と思って切なくなる時こそ、ひとり静かに本を読むことをお勧めします。
気持ちを紛らわすために、テレビや撮り溜めたドラマを見るのも良いのですが、これらは、一方的に情報を送ってくるので、「立ち止まって考える」ということが難しいのです。その点、本は自分のペースで読むことが出来ますし、ふと、考え込むことも容易です。
そして、物語の世界にも、自分と同じように「好きな人に会いたい」気持ちを我慢しているヒロインたちがいます。彼女たちの心を追体験することで、自分の気持ちと重なる部分を見出すことが出来るかもしれません。
「名作本」は「難しい本」ばかりではありません
名作本というと、学校で習う「教科書」に載っているものを想像しがちですが、それだけが名作本だとは限りません。もちろん、教材になっている、日本の古典や数々の作品も名作に違いありません。そして、現在のベストセラーの中にも名作本はたくさんあります。
また、マンガ本にも、名作本と呼ばれるものが多数存在しています。このように、「名作本」はとっつきにくい難しいものばかりではなく、読みやすい、やさしい本も、たくさんあるのです。この中から今回は、女性作家の作品を、いくつかご紹介しましょう。
社会的ブームを巻き起こした「少女マンガ」の傑作です
世に一代ブームを巻き起こした名作「ベルサイユのばら」。作者は池田理代子さんです。この作品は、宝塚歌劇団の舞台化が大ヒットすると共に、「ベルばら」の名前は、日本中を駆け巡りました。また、アニメ化や、英語版の本も発売され、今でも根強いファンが数多く存在します。
物語は、フランス革命の時代を背景に、歴史上の実在の人物(マリー・アントワネットとフェルゼン伯爵)と架空の人物である(オスカルとアンドレ)を軸にした恋愛を描いています。お互いを思いやり、好きな気持ち、会いたい気持ちを「ぐっ」と抑えているヒロインたちに心が揺さぶられます。
大切なものを守るため、懸命に生きた女性の話です
マーガレット・ミッチェルの小説「風と共に去りぬ」。1939年に映画が公開され、アカデミー賞を受賞するほどの世界的大ヒットとなりました。現在でも、この作品を上回るものは作れないと言われています。舞台はアメリカ南部、南北戦争の時代。自由奔放で美しく勝気な主人公、スカーレット・オハラ。
彼女は、いとこのアシュレーのことがずっと好きでしたが、彼は地味で目立たないメラニーと結婚してしまいます。物語では、南北戦争や奴隷制が描かれ、貴族社会の崩壊と共に、スカーレットの大事な場所も失われそうになります。それを守るため、何度も立ち上がる彼女の姿に感動します。
分かりやすい「源氏物語」の世界が広がっています
「源氏物語を読んでみたいけれど、何だか難しそうで…」という人にお勧めなのが、「女人源氏物語」です。作者は瀬戸内寂聴さんです。この本は、源氏物語の口語訳という訳ではありません。源氏物語といえば、主人公は超美男子で有名な「光源氏」。
ですが、この作品は、その光源氏を取り巻く女君や、そのお世話をする侍女たちが「語る」という形で書かれているのです。そのため、とても読みやすく、感情移入がしやすくなっています。光源氏や女君たちが詠んだ和歌も、美しい言葉はそのままに、とても分かりやすく伝えています。
先生も公認。学校の図書館にも置いてある「マンガ」です
あなたの学校の図書館にもあるかもしれません、「あさきゆめみし」です。源氏物語を漫画化した、大和和紀さんの作品です。「どうしても小説は苦手で…」という人は、一度読んでみてください。
そして、「源氏物語なら、もう読んだ」という人にも是非お勧めします。文章だけで読むのとは、また違った感動があります。美しい絵と、美しい文章が、素直に「源氏物語」の世界へと誘ってくれます。
源氏物語の登場人物は、近親者や遠縁の人たちが多く、その姿はかなり似通っているという記述があります。そのため、作画も似ていて、最初は戸惑うかもしれません。ですが、これが「源氏物語」の世界観なのです。
「こんな素敵な女性になりたい!」と思わせる魅力的な主人公です
最後に、田辺聖子さんの「姥さかりシリーズ」です。これは、「姥さかり」「姥ときめき」「姥うかれ」「姥勝手」の四作品からなるシリーズです。このタイトルからも分かるように、この物語の主人公は少し高齢の「歌子さん」(76才から始まって、最終シリーズでは、80才に!)です。
頼りない夫亡き後、自分の才覚で、大きな会社を経営し、それを長男に譲った後は、高級マンションで悠々自適のひとり暮らしを満喫中。そんな歌子さんは、確固とした自信と高い矜持を胸に抱き、いつも美しいものに囲まれて、楽しく忙しく過ごしています。こんな風に年を取れたら、どんなに素敵でしょう。そう思わない女性はいないのではないでしょうか。
「名作本」はあなたの本棚にもあるかもしれません
買っただけで、「いつか読もう」とまだ読んでいない本、読みかけて途中で投げ出した本の中に、あなたの気持ちを揺さぶる本が隠れているかもしれません。また、今まで読んだ本の中で「もう一度読みたい」と思う本を、ゆっくりと読み返してみるのも良いのではないでしょうか。
名作本は、意外とあなたの近くにいるのかもしれません。雑然と積み上げてある本や、整理をしていない本棚を、一度きれいに片付けてみませんか。そうすることで、あなたにとっての「名作本」に出会えるかもしれません。
人それぞれに、「これが、自分にとっての名作本だ」という本は、たくさんあるでしょう。それは、必ずしも著名な作家が書いたものである必要はないのです。自分が感動したり、心を惹かれた作品であれば、それがどのような形をとっていても、自分にとっての「名作本」と言えるのでしょう。
本は何度でも読み返すことが出来ます。そこには、以前読んだときに気づかなかった部分に出会う楽しみもあります。そして、今、あなたが手にした本、気になっている本こそが、あなたにとって「今、必要な本」なのです。是非、読んでみてください。それはきっと、あなたの「心の糧」になるでしょう。
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