嫌いな人とストレスなく過ごす 4つの知恵


だれにでも嫌いな人っていますよね。学校でも、職場でも、そして家族親類の中にも、嫌いな人は必ずいるはずです。

嫌いな人とはつき合わないようにできればいいのですが、現実はそうもいきません。学校や職場を変えても、新たに嫌いな人が必ず出てきます。家族や親族では、嫌いな人を避けようもありません。

そういう時は、嫌いな人となんとか巧くつきあおうと努力する必要があります。嫌いな人の良いところを見つけようとしたり、自分の態度が悪いのかもしれないと反省したり、一生懸命努力した挙句、ストレスばかり溜まってしまって、体調まで崩してしまう・・・などということもありますよね。

嫌いな人ともつき合っていかなければならないのなら、できるだけストレスを溜めないようにしたいもの。そんな時はちょっと考え方を変えるだけで、嫌いな人ともストレスなくつき合うことができます。そこで今回は、嫌いな人とストレスなく過ごす方法をお伝えします。

嫌いな人とは、どんな人?

嫌いな人とは、いっしょにいると不快になり、心地が悪くなる人。いっしょにいるだけで不快なので、会話をしたり作業をしたりするだけでイライラしてストレスが溜まります。

知り合ったばかりの時は嫌いでも好きでもなかったのに、つき合ううちに嫌いな人になってしまうこともありますよね。また、初対面から何となく嫌な感じを受ける人もいます。

どんな人が「嫌いな人」になるのか、整理してみましょう。

➀ 価値観や常識が自分と違いすぎる

価値観や常識は人によって違います。その人の育った家庭環境や躾、受けた教育、成長過程における経験などが影響して、価値観や常識ができ上がります。

価値観や常識は人それぞれですが、多少の違いはあまり気になりません。「そういう考え方もあるのか」とか「そういう生き方も悪くない」とか、すんなり受け入れることができます。

この価値観や常識の違いが大きすぎると、受け入れることに抵抗を感じることもありますよね。「この人は、なぜこんな考え方をするのかしら?」「こんな言い方をするなんて、信じられない」「よくこんなことができるわねェ」と、不快な気分になることも。

これがくり返されると、不快さが増し、「嫌い」と感じるようになります。相手によっては、自分の価値観や常識を押しつけてきます。そうなると、「嫌い」な感じがますます強くなり、「嫌いな人」とはっきり意識するようになるのです。

たいていの人は、「相手の気持ちを思いやる」とか「その場の空気を読む」ことを大事にします。思いやりがない人や空気を読めない人と接しているうちに、不快さが高じて、その人を嫌うようになります。

仕事で大失敗して落ち込んでいる人を慰めようとしている時、自分の出世や成功談を自慢する人がいたら、ちょっと不快になりますよね。さりげなく話題を変えようとしても、しつこく自慢話を続け、失敗した人を批判したりすると、あなたは不快感が強くなり、自慢する人を嫌うようになります。

価値観や常識が違いすぎると、知り合った時には何でもなかったのに、つき合ううちに「嫌いな人」になってしまうことが、よくあります。

② 過去の恐怖体験や嫌悪感と結びついている

初めて会ったのに、「何となく嫌い」と感じる人がいませんか?これは、相手が悪いのではありません。嫌いと感じる方に原因があります。

人間の本能的な恐怖は、「暗闇」「大きな音」「不安定」の3つといいます。「不安定」の代わりに「高いところ」という説もあります。この3つの本能的な恐怖が他の物事と結びついて、様々な恐怖や嫌悪感を生み出すのです。

赤ちゃんが犬に触ろうとする度に大きな音を立てると、犬が怖い子供になります。ある赤ちゃんは、抱かれてビスケットを食べている時に、腕から落ちそうになったので、ビスケットが大嫌いになってしまいました。このように、本能的な恐怖が複雑に結びついて、いろいろな物や人に対して、「怖い」「嫌い」「不快」という感情を持つようになります。

初めて会ったのに「嫌いな人」と感じてしまうのは、昔経験した恐怖や嫌悪を思い出させる何かがあるのです。「幼稚園の頃にイジメられたガキ大将と目つきが似ている」とか「中学の頃、ネチネチとしつこく説教した教師と同じネクタイをしていた」とか、つまらないことで、過去の不快な体験がよみがえって、「嫌いな人」にしてしまいます。

また、実際に経験したわけではないのですが、本で読んだり、TVや映画で見たりして、体験したような気持ちになっていることがあります。この疑似体験のせいで、初対面の人が「嫌いな人」なってしまうのです。TVドラマの殺人鬼によく似ているために、「嫌い」「怖い」と感じてしまったりするのです。

③ 自分と同じ欠点がある

私達は、自分と同じ欠点がある人を嫌う傾向があります。「投影」「同族嫌悪」と呼ばれる心理です。

「嫌いな人」のイヤな部分をよく見ると、自分と同じ欠点だとわかります。「私は頑固で、他人の意見にすぐ反発する。だから人に好かれない」と思っている人は、同じように意地を張る人を嫌います。「根暗な性格で、友達ができない」と悩んでいる人は、無口で暗い感じのする人に反感を持ちます。

私はポッチャリ体型で、ダイエットに失敗ばかりしています。そのため、肥満体型の男女タレントを嫌う傾向があります。どんなにいい役者だとわかっていても、好きになれません。

自分自身の嫌いな面、弱い部分を見せつけられるような気持がするので、不快になり、「嫌いな人」と感じるようになってしまうのです。

④ 「嫌われている」と思うと、「嫌いな人」になる

ふつう、私達は、相手に向けられた感情と同じ感情を相手に対して持つようになります。「感情の返報性」といいます。

「好意的だ」と感じる人には好意を持つようになります。「あの人は、私を嫌っている」と感じると、その人は「嫌いな人」になってしまいます。

「嫌われている」と感じる理由は、明確なものとは限りません。「何となく」嫌われていると思い込む場合が多いのです。過去の経験や自己嫌悪が原因で、嫌われていると思い込むことも少なくありません。

ですから、「嫌いな人」が本当に自分を嫌っているかどうか、わかりません。相手は自分を好きでも嫌いでもないということが、よくあるのです。

もちろん、相手が本当にこちらを嫌っている場合もあります。その場合は、相手に対する嫌悪感が強くなり、ますます「嫌いな人」になってしまいます。

 

嫌いな人とストレスなしにつき合う4つの知恵

「どうして嫌いな人ができるのか?」がわかると、そのつき合い方もわかってきます。学校や職場、親族間で、嫌いな人とストレスを溜めずに過ごすには、次の4つの知恵を利用してみてくださいね。

[知恵Ⅰ 自分を丸ごと好きになる]

どんな人間でも長所と短所があります。欠点のない人間など1人もいません。完全無欠の人がいたら、尊敬するとしても、お友達にはならないでしょう。古今東西の優れた美術品は、わざと完全無欠にしていません。わずかに欠点がある方が、美しさを引き立てるといいます。

しかも、短所・欠点が悪いとは限りません。無口は「沈黙は金」、消極的は慎重、おっちょこちょいは活動的・積極的と、言い換えられます。プラス思考で見直すと、どんな欠点も良い点に変わってしまいます。

良い所も悪い所も、得意も不得意も、何もかもひっくるめて、「それが自分なのだ」と受け入れてください。「欠点があるからこそ、自分は自分らしいのだ」と考えてください。自分を好きになると、自分に良く似た短所・欠点を持つ「嫌いな人」を受け入れることができます。

自分とよく似た欠点や弱さのある人を好きになることはできなくても、いっしょに過ごしてもストレスを感じなくなります。自分に寛大になると、「嫌いな人」が減るかもしれません。

[知恵Ⅱ 初対面から嫌いな人とは、よく話し合ってみる]

つき合っているうちに、だんだん「嫌いな人」になっていく場合と違い、初めて会ったとたんに「嫌いな人」と感じる場合は、何の根拠もないことが多いのです。過去の体験・疑似体験がその人の何かと結びついているだけなら、少し話し合えば、よくわかります。

さりげなく、穏やかな口調で雑談を交わすだけでいいのです。その人が、過去の意地悪な教師や暴力的なガキ大将と全く別人とわかれば、「嫌い」という感情が薄れていきます。TVの悪役にそっくりだから嫌いな人になっている場合など、理由がわかっただけで大笑いしてしまいますね。

過去の体験・疑似体験が関係しているとわかっても、「嫌いな人」が「好きな人」に変わるわけではありません。ただ、嫌いな理由が、その人と全く関係ないとわかれば、いっしょに過ごしてもストレスを感じないようになります。

「相手に嫌われているように感じる」時も同じです。話し合ってみると、相手が何の感情も持っていないことがわかるかもしれません。話し合って、大笑いして、無二の親友になる場合もありますよ。

[知恵Ⅲ 挨拶だけは欠かさないようにして、サラリとつき合う]

価値観や常識が大きく違う人とは、なかなか巧くつき合うことはできません。こちらが良いと思うこと、当り前と思うことが、相手に通用しないのです。しかも、相手が上から目線で強い態度に出てくると、イライラするばかりです。こういう「嫌いな人」には近づかないのが一番です。

こういう「嫌いな人」とは無理につき合わないようにすればいいのですが、職場ではそうもいきません。「嫌いな人」といっしょに仕事をしなければならない時は、仕事に専念します。自分の分担を黙々とこなすようにして、よけいな口を利かないようにします。

嫌いな人にも、挨拶だけは欠かさないようにします。「挨拶もしない」と言われるのは、あなたの損になります。嫌いな人が挨拶を返さなくても、気にしないでください。「挨拶は大事」という常識が、相手にはないのです。

嫌いな人と口を利く時は、できるだけ穏やかに話してください。こちらが相手を嫌っていることは、なんとなく相手に伝わっているものです。すると、「感情の返報性」で、相手もこちらに悪感情を持つようになりますから、敵意をむき出しにした激しい口調で話すと、相手も攻撃的になり、険悪な状態になります。

価値観や常識が違い過ぎて嫌いな人とは、同じレベルにならないようにします。相手の言動に一々腹を立てたり、イライラしたりするのは、相手と同レベルに立つことになります。

「この人と私は違うのだ」と割り切って、サラリとつき合うようにしてください。「違いすぎる」と割り切ると、ストレスも溜まらないようになります。

[知恵Ⅳ 嫌いな人には個人情報を知られないようにする]

価値観や常識が違いすぎて嫌いな人とは、個人的なつき合いを避けます。違いが大きすぎて、互いに受け入れることができないのですから、なるべく近づかない方がストレスになりません。

嫌いな人には、個人情報(悩み・弱み・心配事など)を、なるべく知られないようにします。嫌いな人があなたの悩みや心配事を知ると、自分の意見を強引に押しつけて来ることがあります。嫌いな人は「良い」と思ってアドバイスしているのでしょうが、あなたは受け入れることができず、イライラするだけです。

嫌いな人に個人情報を知られないようにするには、嫌いな人と共通の友人をつくらないことです。共通の友人から嫌いな人に個人情報が漏れてしまうのです。

嫌いな人とは表面的なつき合いにとどめます。礼儀正しく穏やかに接していれば、周囲はあなたに好感を持ちます。相手が非常識な言動をしても、周囲の人々の好意が、あなたを心地良くしてくれます。嫌いな人ともストレスなく過ごすことができます。

 

「嫌いな人」がいるのは、悪いことではない

嫌いな人とストレスなく過ごすには、「嫌いな人がいるのは、悪いことではない」と考えるようにします。人間は十人十色、いろいろな価値観や常識を持つ人がいます。その様々な価値観や常識を何もかも受け入れることはできません。

自分と異なる価値観や常識を受け入れることはできなくても、「そういう価値観や常識が世の中にはあるのだ」と認めることはできます。互いに違う価値観や常識を持っていると認め合うことが、民主主義の基本です。

認め合うことは大事ですが、自分と違い過ぎる価値観や常識を持つ人を好きになる必要は全くありません。「嫌いな人」を無理に好きになろうとして、その人の長所を一生懸命探したり、自分の欠点を反省したりすると、ストレスがかかります。ストレスが強いと不快になり、その人をますます嫌いになります。

「世の中、嫌いな人がいてもしかたがない」と割り切ると、楽になります。そして嫌いな人とはそれなりにつき合えばいいのです。

時には、あまりにも非常識な「嫌いな人」にズバリと言ってもいいですね。「どうせ嫌いな人だから喧嘩になってもかまわない」と、割り切ることもできます。喧嘩がイヤなら、ちょっと知恵を働かせて、ジョークで抗議することもできます。ジョークの意味が分からない相手は、「所詮、自分とは相容れない人なのだ」と、諦めることが大事です。

世の中にはいろいろな人がいます。だから好きな人もいれば嫌いな人もいるのが当たり前。私達は、幼い時から「人を好きになることが大事だ」と教えられて育ちます。でも、好きな人ができれば、嫌いな人もできるのです。

 

さて、嫌いな人がいると、たいていの人は悩みます。ある小説の女主人公は「わたしには、嫌いな人しかいないの。嫌いな人が多すぎるの」と悩みます。嫌いな人がいるのは、悪いことだと考えているからです。

それで、嫌いな人を無理に好きになろうとします。「嫌いという感情を克服することによって、人間的に成長できる」という人もいます。でも、人を嫌いになる理由を考えると、簡単には克服できない感情ということです。

嫌いな人を無理に好きになろうとすればストレスがかかります。嫌いな人とはいっしょにいるだけでストレスですから、イライラがつのるばかりです。

世の中には大勢人がいるのだから、嫌いな人がいてもいいじゃないか・・・と考えるだけで、気持ちがぐっと楽になります。嫌いな人とは適当につき合えばいいと割り切れば、ストレスなしで過ごすことができます。

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