癒しの音楽を聴くとリラックスできる、または波の音・小川のせせらぎといった自然の奏でる音を聴くと心が落ち着く…など、音楽に心身を癒す効果があることは、よく知られています。
胎教のように、妊娠中に癒しの音楽を聴かせることが赤ちゃんに良い影響を及ぼすといった例は、特に有名ですよね。最近では、大人に対しても、癒しの音楽が効果を発揮するということが実証されつつあり、注目されています。
「音楽療法」という言葉をご存じでしょうか。具体的には、音楽を聴いたり、歌ったり、演奏したりすることにより、不安やうつ状態を和らげて心の回復を図ったり、音楽によるリラックス効果で痛みなどを緩和したりするセラピーのことです。
音楽療法は老人ホームや病院施設などでも実践されているほか、自閉症や失語症、うつ病の治療・緩和にも取り入れられています。このように、癒しの音楽には、人間の心身に大きな影響を与えるパワーがあるのです。
音楽が心身に影響を与え、疲労を回復させる訳を知れば、私たちも日常生活にそのパワーを取り入れることができます。そこで今回は、癒しの音楽が心身の疲労回復に効果を発揮する訳と、癒しの音楽を日常生活に取り入れるワザをお伝えします。
筋肉の緊張を和らげる癒しの音楽を活用しよう
音楽が心身の疲労回復に効果を発揮する1つ目の訳は、音楽が心拍・血圧・血流の酸素量といった身体機能に影響を及ぼすからです。ゆっくりとした、おだやかな音楽を聴くと、心臓の鼓動もゆっくりになります。
一方、アップテンポの音楽を聴くと、心臓の鼓動も早くなり、心拍・血圧も上昇します。また、癒しの音楽が筋肉の緊張を和らげることも分かっています。癒しの音楽を聴くことにより、筋肉の緊張が和らぐことで、身体のこわばりがほぐれ、疲労回復につながるのです。
エンドルフィンを分泌する癒しの音楽を活用しよう
音楽が心身の疲労回復に効果を発揮する2つ目の訳は、癒しの音楽が脳内のエンドルフィンを増大させるからです。エンドルフィンは、「自然の鎮痛剤」とも呼ばれる脳内物質の一種です。
モルヒネと同じような作用をすることから、脳内麻薬と呼ばれることもあります。この物質が分泌されると、気分が高揚したり、多幸感を得ることができます。
また、マラソン選手の疲労や苦痛が最大限に達した後、不思議と快感や陶酔感が得られる「ランナーズ・ハイ」という現象がありますが、これもエンドルフィンが分泌された結果です。
このエンドルフィンは、美味しいものを食べたときや、好きな人と話したときなどにたくさん分泌される他、癒しの音楽を聴くことによっても分泌されることが分かっています。癒しの音楽を聴くことで、鎮痛作用のあるエンドルフィンが増大し、疲労回復につながるのです。
1/fゆらぎのある癒しの音楽を活用しよう
音楽が心身の疲労回復に効果を発揮する3つめの訳は、癒しの音楽には「1/fゆらぎ」があるためです。小川のせせらぎやそよ風、人の身体のリズムなどはすべてこの「1/fゆらぎ」と呼ばれる微妙なゆらぎを持っています。
これはメトロノームの音とラジオの雑音の中間にあたり、規則正しさと不規則性が調和し、聞く者を心地よくさせる効果があります。モーツァルトの音楽などには、この「1/fゆらぎ」が含まれており、この微妙なゆらぎが心身の疲労回復につながるのです。
モーツァルト音楽の癒し効果を活用しよう
さて、ここまで、音楽が心身の疲労回復に効果を発揮する訳を述べてきました。「癒しの音楽に効果があることはわかったけれど、どんな音楽を聞けばいいの?」と不思議に思った人もいることでしょう。
そこで、オススメの音楽を2つお伝えします。癒し効果を持つオススメ音楽の1つ目は、モーツァルトの音楽です。モーツァルトの音楽には、先に述べた「1/fゆらぎ」もばっちり含まれています。
あるアメリカの大学で、試験前に学生にモーツァルトの音楽を聞かせたところ、IQが8~9ポイント上がった…という実験結果もあります。モーツァルトの音楽には、心身をリラックスさせて頭脳の働きを高める力があるのです。
クラシックはちょっと…という人もいるかもしれませんが、癒しの音楽としては、聞いていて眠くなるくらいがちょうどいい、ともいえます。
世界一の癒し音楽「ウェイトレス」の効果を活用しよう
癒し効果を持つオススメ音楽の2つ目は、マルコニ・ユニオン作曲の「ウェイトレス」です。喫茶店などで働くウエイトレスではなく、「無重力」(weightless)という意味の楽曲です。
ギター、ピアノ、エレクトロ等を合わせた楽曲で、海外の実験で、世界一癒される音楽であると認定されています。実験では、他の癒しの音楽に比べて、「11%以上のリラックス効果」「65%の緊張度低下」「35%以上の心拍数低下」が見られたといいます。
実際に聞いてみると、母親の子宮の中に戻ったような、もしくは宇宙空間を浮遊しているような、不思議な癒しの感覚を味わえます。YouTube等で気軽に聞くことができます。ぜひ1度聞いてみてください。
さて、日々溜まっていく仕事の疲れやストレスは、翌日に残さずに取りたいものですよね。アロマやヨガなど、様々な癒しの方法がありますが、音楽好きにとって癒しの音楽を聴くことは、かなり効果的な疲労回復の方法といえるでしょう。
ここまでご紹介してきたように、癒しの音楽には、筋肉の緊張を和らげたり、幸福感をもたらす脳内物質を増大させたり、1/fゆらぎという微妙なゆらぎによってリラックスをうながす効果があります。
とはいえ、あまり気構えず、自分の好きな音楽をくつろいで楽しむことが大切です。リラックスできるお気に入りの音楽が、最高の癒しの音楽だといえます。
特にお気に入りの音楽はないけれど、癒しの音楽を生活に取り入れてみたい…という場合には、科学的に癒しの効果が認められているモーツァルトの音楽や、マルコニ・ユニオン作曲の「ウェイトレス」などを聴いてみるとよいでしょう。
音楽鑑賞ではないので、聴きながら心地よく眠ってしまうくらいがちょうどいい、とお考えください。今日からあなたも癒しの音楽の効果を、疲労回復に役立ててみてください。
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