人間関係と言えば、親子や友だち、ご近所さんなどさまざまありますが、ビジネスをする上での人間関係もありますよね。みなさんは、上司であるとき、部下であるときなど、そのときの立ち位置によって、同じ一人の人間なのにまったく別の人に見えたという経験はありませんか?
そのときの心理はどのようなものなのでしょうか?そこで今回は、役割で変わる男の人の心理についてご紹介します。心理学の話になるので、少し難しい専門用語が出てきますが、できる限り分かりやすくご紹介していきますので、どうぞお付き合いくださいね。上司、部下、同僚、役割別で変わる男の心理を分析してみましょう。
性格は4層構造になっています
みなさんは性格について、詳しく考えたことがありますか?私たちがひと言であらわす「性格」は、心理学や精神分析学では、4層構造になっていると言われています。その中心となっているのが「気質」と呼ばれる生まれつきの性格です。
みなさんは、赤ちゃんを見たことがありますか?よく泣く赤ちゃんもいれば、あまり泣かない赤ちゃんもいます。よく笑う赤ちゃんやさまざまなことに興味を示す好奇心旺盛な赤ちゃんなど、世の中のことをまだ何も知らないはずの赤ちゃんですが、その性格はさまざまですよね。
これには気質が関係しており、この気質の部分はどれだけがんばっても変えることができない性格だと言われています。気質の外側に位置しているのが、「狭義の性格」と呼ばれるものです。
これは、三つ子の魂百までということわざのとおり、幼少期までに親の教育などで培われた性格のことです。狭義の性格を覆うように形成されているのが「習慣的性格」と呼ばれるもので、一般的に性格と言うと、この部分を指しています。
これは、毎日のさまざまな経験を通して形成されていく性格のことで、表面的な態度のことを言います。習慣的性格を覆うように形成されているのが、一番外側の「役割的性格」です。
これは、人間社会におけるさまざまな場面に順応しようとする過程で形成されていく性格です。この役割的性格こそが、立ち位置が変わることで、別人にも見えるような心理を引き起こしているものの正体です。
色々な環境に応じて役割的性格を演じています
役割的性格について、もう少し詳しく説明しましょう。少しご自身のことを振り返ってみてください。あなたは日常的にどのような役割を担っていますか?仕事や家庭、地域や友人関係などさまざまな場面に応じた役割がありますよね。
たとえば、会社では部長ですが、家に帰ればお父さんであり、夫であり、地域や子どもの学校などで役員を引き受けているかもしれませんね。あなたは一人の人間ですが、そのときの場面により役割が異なっていることでしょう。
日常の生活を円滑にすすめるためには、さまざまな環境に合わせて性格を柔軟に変えていくことが必要となってきます。そのために形成されていくのが役割的性格で、環境に適応するための技術とも言えるでしょう。
あなたもさまざまある役割ごとに性格が異なっていませんか?また、相手によって性格を使い分けているということはありませんか?子どものころは、適応しなければならない場面は少ないものですが、大人になるにつれ、適応しなければならない場面が増えてきます。
それに伴い、役割的性格も増えていきますが、相手や環境に応じて無意識に切り替わる特徴があります。
役割的性格に対して、認識の仕方が違います
縦社会で生きると言われる男性は、「いつかは上に立ちたい」と考える傾向にあります。そのため、ビジネスの世界では、先に明確な任務や肩書きなどの役割を与えることが人材育成や人材活用において一番だとされてきました。
先に役割を与えることで、その役割に応じた行動をとるからです。この役割に応じた行動と言うのは、人それぞれ異なります。たとえば、人事異動で部長に就任したとしましょう。
この場合、人は無意識に「部長という役割にはどのような期待が寄せられているか」とか「部長とはこういうものだ」というような役割に対する認識をします。部長とは偉いものだと思っている場合はそのように振る舞い、部長とは部下に信頼されるものだと思っている場合は、信頼される上司になれるよう振る舞います。「部長」という役割をどう認識したか、どう認識しているかによって、役割的性格が異なるのです。
衣服で人の心理は変わります
実は、衣服でも性格が異なります。あなたは日ごろどのような服を着ていますか?ビジネススーツですか?作業服ですか?制服かもしれませんね。休日はどのような服を着ているでしょう?日ごろ着慣れているそれらの服とまったく異なるタイプの服を着たらどうなると思いますか?
たとえば、日ごろからビジネススーツを着ている人が、警察官の制服を着たらどうなるでしょう?日ごろ着慣れた服と異なる服装は、なんとなく落ち着かない気がしますが、慣れてきた頃には、無意識にその服装に対するイメージと同じ振る舞いをする傾向があります。
心理学の実験から役割的性格をみてみましょう
役割的性格を証明したのが、1971年アメリカのスタンフォード大学で行われた「囚人と看守」という実験です。条件が一定になるように集められた21人の白人男性を囚人10人、看守11人に分け、囚人には囚人服と囚人番号を、看守には制服をそれぞれ与え、作られた刑務所施設でリアルに再現された、心理学の実験の中でも「最悪」とも言われる実験です。
結果として、看守役は誰に指示されるわけでもなく、看守らしい振る舞いを始め、囚人役は徐々に人間としての尊厳を失い始めたような態度が見られるようになり、実験開始4日目には囚人役の自我が崩壊を始め、6日目に中止になっています。
監修した心理学者さえも、その状況に飲み込まれ危険な状態を認識できなかったとされるこの実験で、人は置かれた立場や環境により、自らの行動が変わる役割的性格を証明することができましたが、この実験の被験者にはおよそ10年のカウンセリングが必要でした。
役割を演じてたまったストレスを解放しましょう
人はみな、さまざまな役割を持っていますが、その役割を演じる中で、無意識に「こうあるべきだ」とか「こうでなくてはいけない」という心理を抱えています。これは、本来の自分から遠い性格であればあるほど、疲れたりストレスを抱えたりしてしまうことがあります。
これは、自分がやりたいからやっているのではなく、「やらなければいけないからやっている」という、自分の何かを証明するために行っている補償行為になってしまっているからです。
この疲れやストレスを解放するためには、自分が持つその役割の「こうでなければいけない」とか「こうしなければいけない」というような概念から離れ、自らが行動を選択するようにするとよいでしょう。
役割的性格を活用して自分を変えてみましょう
自分を変えたい場合は、役割的性格を応用してみましょう。役割的性格は、それぞれの環境に応じて使い分けられている性格なので、自分を変えたいかたは、環境を変えてみることで変われることがあります。
どのように変わりたいのか、それは、どんな環境にいる人なのかを具体的な部分までよく考え、それに近い環境に身を置くことで、性格を変えることが可能です。ただし、その環境に耐え続ける必要があるため、さまざまな苦痛を耐えるだけの覚悟が必要です。
上司や部下などビジネスの場だけでなく、人はさまざまな役割を持ち、役割ごとに性格を無意識に使い分けていることがお分かりいただけたでしょうか。これは、男性に限った話ではなく、生きるために人と関わることが必要な人間社会をうまく生き抜くための技術でります。この役割的性格を正しく認識して、上手に活用することができれば、ストレスが少ない社会になるかもしれませんね。
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