職場の人間関係で悩まない為に理解しておくべき集団の心理

職場というのは、多くの人にとって、もっともたくさんの人と関わる場所ですよね。上司、同僚、部下、取引先・・・・・・そして、睡眠をとる自宅以外では1日でもっとも長い時間を過ごす場所でもあります。

長時間多くの人と関わり続ける職場では、人間関係がうまくいくかは死活問題。生活していくために欠かせない収入を得る場である職場は、ちょっとうまくいかないことがあったからといって、次の当てもないのに簡単に飛び出すわけにもいきません。

そんな職場での人間関係を円満に保ち、いつも気持ちよく仕事ができるように、理解しておいたほうがいいのが「集団の心理」。

職場とはたいてい複数の人たちで構成されており、何かトラブルがあったとき、あるいは何かを複数で決断するとき、集団の心理が働くことがあり、それが時にはあなたを被害者にも加害者にもしてしまう可能性があるのです。職場の人間関係で悩まないために、集団心理の特性を理解しておきましょう。

匿名性が働くことに気をつけよう

集団心理の特性のひとつに、「匿名性」があります。自分自身を、大勢の集団の一部のように感じ、自分が特定の名前を持ち、立場や責任を持つ一人の社会人であることを忘れてしまうのです。

ふだんは周囲に迷惑をかけたり悪く言われないように、自分がどういう行動をとるべきか注意深く気をつけているのにもかかわらず、です。結果、何らかのトラブルなどの槍玉に上がった人に対して、面と向かっては絶対に言わないような非難の言葉を投げつけたり、集団で責任を擦り付けて自分は知らん顔をするようなことが起こってしまいかねないのです。

このようなことはよくネットの世界でも起こっていますよね。匿名での発言がしやすいネット上では、人権を侵害するような言葉を平気で言う人がたくさんいます。「赤信号もみんなでわたれば怖くない」という集団の匿名性が働いてしまっているのです。気がつくと自分が加害者になっていることもあるので、意識して自分の行動に気をつけてみましょう。

 

お互いに感情的になっていないか意識しよう

いじめなどのネガティブな場面でなくとも、集団の効果というのはさまざまな場面で強く現れます。たとえば大勢でスポーツ観戦をしているとき、応援の歓声もブーイングも、普段以上に大きくなりがちだと思います。

複数でひとつのことに集中すると興奮しやすくなり、ポジティブな感情もネガティブな感情も、ヒートアップしやすくなるのです。もしたった一人でテレビの前で観戦していたなら、気持ちは高揚していても、極端に大声で叫んだり拳を振り上げたりするようなことは少ないのではないでしょうか。

職場という集団でも、ふだんは理性的に仕事をこなしている仲間たちが、トラブルなどをきっかけに極端に怒りをあらわにし、誰か一人を攻撃してしまう、なんてことも起こりえます。

一対一では特定の一人を非難などしない人が、集団になると興奮して感情的になってしまうのです。自分が周囲にあおられて、理性を忘れた言動をしてしまっていないか、意識してみましょう。

また自分が周囲に激しく非難されたときは、そのような集団心理が働いている可能性を知り、気にし過ぎないようにすることも必要かもしれません。

 

暗示にかかっていないか注意してみよう

集団の中にいると、場の空気や、同調圧力におされて、強い立場にいる人間の意見に知らないうちに従ってしまうという、被暗示性も働きやすくなります。

日本人は特に、場の空気を過剰に読み、雰囲気や流れを乱すような行動や発言がしにくい、と感じる人も多いと思います。被暗示性が強く働き悪い方向へとつき進んでしまった事例として、ヒトラーが推し進めたナチス政権でのユダヤ人弾圧や、オウム真理教をはじめとする新興宗教があげられるでしょう。

迫力のある巧みな演説によって集団心理を操り、われに返って冷静に考えるひまもなく暗示をかけてしまうのです。これは極端な事例かもしれませんが、つい場の雰囲気に流されて、正しいと思っていないのに従ってしまうなんてことは、実は頻繁に起こっていることではないでしょうか。

 

周りの空気に流されすぎていないか気をつけよう

群集での意思決定は、個人の判断よりも極端な結果になってしまうといわれています。ネット上でも、誰かが発した意見に対して激しい非難が巻き起こり、そこにどんどん同調する人が現れて、集団リンチみたいなことが発生してしまうのです。

現実の世界でも、学校での集団いじめや、災害時・大恐慌時のパニック状態があげられます。スーパーや銀行に大勢の人が殺到して、いっそう不安な気持ちがあおられ、パニックがパニックを呼び混乱状態に陥ります。

これに対して、集団で討議した結果、安全志向に陥ってリスクをできるだけ避けた結論を出し、なんの解決策にもならない、というようなパターンも起こりえます。

特に会社や役所の会議では、場の空気を読むあまり、前例のないことにチャレンジしたり、反対意見を出すことが難しく、時間をかけて慎重に論議すればするほど、打開策のひとつも生み出さない会議になってしまう、というのはよく見られる場面でもあります。

 

群集の規模が大きいときは特に気をつけよう

今までご紹介してきたような集団心理の特性は、群集の規模が大きくなればなるほど、強く働いてしまう傾向にあります。群集の規模が大きいというのは、匿名の傍観者が多いということでもあります。

集団の分母が多いと、自分という個の責任はいっそう薄められ、自分のしていることの意味が認識しづらくなります。選挙の投票率の低さの原因にもあげられることではないでしょうか。

また、これはいじめなどを想定すると分かりやすいのですが、傍観者が多ければ多いほど、止めに入ることが難しくなります。今度はたくさんの傍観者(加害者)の目が自分に向いてしまうであることが容易に想像できるからです。

このように、集団心理といってもその規模によって、トラブルや被害が拡大してしまう可能性を多くはらんでいます。

 

「集団心理は怖い」とはよく言われますが、それを具体的に理解していなかった人も多いのではないでしょうか。あるいは、日常的に集団に取り込まれてしまうことに慣れ、自分という個を意識しづらくなっている人は、集団心理の怖さや特性に気づく機会もなかなかないかもしれません。

集団心理の特性を知らずにいると、被害者になるばかりではなく、知らないうちに加害者になって、他人を深く傷付けてしまっている場合もあるのです。

あるいはこのような集団の心理が、職場などの人間関係だけでなく、より政治的、国家的な次元で働いてしまうことによって、テロ行為などにつながってしまうとも言えます。

人間関係は、職場だけでなく、家庭や学校、地域などさまざまな場所に存在しており、それらを避けて生活していくことは不可能です。自分も周囲も気持ちよく社会生活を送れるようにするために、集団心理の特性を知り、場の空気や圧力に極端に影響されすぎないように気をつけましょう。

コメントをお書きください